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アブラムシのふしぎ

2010.3.4 更新

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 50数年前の大学の農場で、当時応用昆虫学教室の助手であった恩師田中正先生が、ナタネの花穂に群がって寄生している白い粉を覆った虫(ダイコンアブラムシ)を掲げ、「君たちこの虫を見て研究心が湧かないかね」語った。これが私とアブラムシとの最初の出会いであった。

 「アブラムシ」と聞くと、家庭内で嫌われているゴキブリも「油虫」と呼ばれ、この方が一般的に知られているが、ここで言うアブラムシとは、多くの作物の新芽などに群がるように寄生している虫で、通称「アリマキ」とも呼ばれている。このアブラムシは種類が多く世界では3000種以上がいるといわれ、日本では7~800種が知られている。ほとんどの農作物に寄生しその被害も大きい。

 庭木や家庭菜園などで、数日前には見られなかったアブラムシが、突然湧き出るように群がって見られることがあり、その姿もグロテスクで多くの人に嫌がられている。この湧き出るように現れる秘密は、他の虫では考えられないような生態にある。春から夏に掛けでの繁殖期では、寄生している虫は全部メスで交尾をしなくとも生殖能力があり、生むのは卵でなく哺乳動物のように頭や手足の付いた仔虫を、条件さえ良ければ1日に5~15匹も生み落とす。生まれた仔虫は4~7日で成虫になり、直ぐ仔虫を生み始める。計算上では1匹のアブラムシが数か月後は数億匹になることになる。メスだけの生殖、直接仔虫を生む発育速度の速さ、生存率の高さや生まれてくる仔虫の多さなどが驚異的な繁殖力の要因といえる。

 このアブラムシも寄主植物上で過密になり、栄養状態が悪くなると、翅(し)のある成虫が出現し、新しい餌を求めて飛び立つ。また、冬が近かずくと卵を産めるメスや両性生殖させるためのオスを生み、交尾して卵で冬を越す。これらは長い進化の過程で得た強さとおもわれるが、このような現象が起きる要因の1部はわかっているが生物学的にはほとんど未解明である。

 アブラムシの被害は直接加害の他ウイルス病の媒介が恐ろしい。私の卒論は「ねぎ萎縮病とアブラムシの媒介」で、ねぎはネギアブラムシしか寄生しないが、普段寄生しないモモアカアブラムシなどの有翅(ゆうし)型がゆきずりに飛来して瞬時に媒介するらしいのだが、50数年前の大学では設備は不十分で、時間もなく完全には証明できなかった。アブラムシのもう1つの問題は薬剤抵抗性で、昭和50年代の初め、平塚市にある全農農業技術センターでパラフインを用いる経口投与法の試験で、モモアカアブラムシの有機リン剤抵抗性個体の出現を、いち早く証明し応動昆学会の大会で発表したが、転勤で試験は中断し論文をまとめられなかった。

ナタネに寄生するダイコンアブラムシ

キクヒメヒゲナガアブラムシ

恩師 故田中正宇都宮大名誉教授

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