トップ › あさchyoの虫小話 › 昆虫学を支える「虫屋」

ページタイトル

昆虫学を支える「虫屋」

2010.3.4 更新

空白
 過日、福岡市の地元出版社の小さなギャラリーで、T氏の蝶のコレクション展が開かれた。小さな会場のため標本箱50個の展示であったが、長年に渡って手塩に掛けた「飛ぶ宝石」のような蝶が地域別、体系別に並べられ、見る人々の目を見晴らせた。また、夜に行われたT氏を囲んでのミニ講演会には、海外の蝶にまつわる珍しい話や、いま研究中のクロツバメシジミの変異の話など、人柄もあり和やかな集いであった。

 T氏はいわゆる昆虫少年で、小学5年生の時に町の昆虫地図と標本で県知事賞を受賞、将来の昆虫学者を夢見て大学でも昆虫学を専攻した。卒業後は農薬会社のN社に入ったが、仕事は研究でなく営業と普及関係で昆虫とは縁遠いものであった。

 しかし、昆虫とりわけ蝶への熱情は冷めることなく、時間を作っては各地に採集にでかけた。定年をまたずに早めに仕事をやめた後は、行動範囲はますます広がり、ボルネオ島、などの東南アジアやモンゴルなどに長期滞在したり、海外協力機構(JICA)のシニア海外ボランテアの仕事に応募してケニアに行き、蝶の飼育の指導をかってでたりした。05年に名古屋で開かれたEXOP「愛・地球博」のケニア館にT氏の提供した300頭の蝶の標本が舞うように展示されたという。

 農作物の防除の仕事をしているなかに、いわゆるアマチュアの「虫屋」と称される人が案外多い。小さい時から虫好きで、大学では昆虫を専攻したものの、卒業後は昆虫に関する仕事がなく、心ならずも虫を殺す立場の研究機関や農薬会社に入ったが、虫への情熱は冷めやらず、趣味として虫の世界にのめり込んだためかと思われる。そんな人たちが集まり昆虫の同好会を作って楽しんでおり、T氏も私もその1人である。

 その同好会の1つに「アグロ虫の会」がある。農産物の防除に係る仕事をした虫仲間の集まりで、15年前に作られた。会長は昆虫の本収集で知れ著書も多いK氏、副会長も多くの昆虫関連の著書を出しているU氏で、会員も20名制限しているので入会は中々むずかしい。

 規約は厳しく、ます会員は50歳以上、年3回例会を欠席すると除名、ボルネオ島など海外にも度々遠征したが、今は会員が高齢化し専ら国内で写真を中心に活動している。機関誌「アグロ虫」を発行しておりオールカラーの豪華版、表紙はS副会長の手書きの蝶、発行部数は20数冊に限定しているので、そのうちプレミアが付くのは必定といわれている。

 いわゆる「虫屋」の中には「くろうとはだし」つまりプロ顔負けの仕事をしている。アマが多く見られる。これらの人が集まり、全国に100を超える昆虫の同好会が作られており、それが発展してアマの人が中心になって支える専門的な学会まで作られ活動している。特に分類や生態の分野では、本来の仕事の余暇を利用して、研究に大きな成果を挙げている人もおり、我が国の蝶蛾やカミキリ、カブトムシなど甲虫類の分布や生活史はほとんどこれらのアマチュアの人々が調べたものといえよう。

コレクション展で講演するT氏

会場のT氏夫人(右から2人目)

アグロ虫の会の機関誌「アグロ虫」

アグロ虫の会の面々

空白
back
ページ上に戻る