トップ › あさchyoの虫小話 › かまくらちょう

ページタイトル

かまくらちょう

2010.3.4 更新

空白
 蝶のことを、戦前の教科書などでは「てふ」とカナが振られており、その語源は中国ー朝鮮からと言われている。蝶は東北地方のヒールから沖縄のハベルまで多くの方言があり、私の郷里の栃木ではベラッチョ、チョーマなどと呼ばれていた。

 これらの方言と別に関東から中部地方の一部に、アゲハチョウ類を「かまくらちょう」と呼ぶことが古くから知られている。これについては今井彰氏が著書「鎌倉蝶」で詳しく考証している。

 それによりと、かまくらちょうと呼ばれている地域をアンケートなどで調べた結果、古くからあった鎌倉街道の上道(群馬の国府から武蔵野の原を南北に横断し鎌倉に至る道)に沿ったラインと、富士山の南側の富士宮、伊豆半島あたりに集中しており、関東でも栃木、茨城、千葉では使われていない。

 そしてかまくらちょうはどんな蝶を指すのかについては、クロアゲハやカラスアゲハなど大型の黒いアゲハとの答えが多かったという

 語源については、今井氏は質実剛健な鎌倉武士の死生観と蝶が象徴される再生、これが人間の魂に結びついているのではないかとしており、また、鎌倉に多く見られるやぐら(崖などに作られた横穴式墳墓)と関係しているのではないかと推論しているが確証はなく、伝説や伝承に基ずく方言・民俗の語源を調べるのには限界があると述べている。

 私も語源につきいて図書館などで調べたが、かまくらちょうという言葉を使ったは資料は見つからず、鎌倉武士に関する歴史書や解説書にもふれられていなかった。

 安西篤子さんの随筆に「鎌倉の私の庭で黒い大型の蝶がしんと静まり返った白昼、花から花へゆったりと飛び回る姿は美しいばかりでなく、どこか魔性が感じられて思わず息を呑む」とあるが、この感覚がかまくらちょうの語源に繋がっているのかも知れない。

 なお、鎌倉蝶の著者今井彰氏は郷里の長野県須坂市で「蝶の民俗館」という博物館を開設している。古い民家の土蔵を利用した小さな館だが、展示品は充実し見ごたえがある。(金、土、日のみ開館)

今井彰著「鎌倉蝶」の表紙

ヒガンバナの花を吸密するクロアゲハ

タニウツギの花に飛来したカラスアゲハ

空白
back
ページ上に戻る