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ランカウイ島に蝶を追う

2012.7.10 更新

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 2012年2月16日、午前8時45分熱帯の強い陽差しに迎えられ、マレーシアのランカウイ島に到着した。空港を出ると、あごに髭をたくわえ、真っ黒に日焼けしたTさんがにこやかに出迎えてくれた。福岡在住のTさんは、ご夫婦で毎年ランカウイ島に2~3ヶ月滞在されており,今年も正月明けから来ておられるという。

 Tさんご夫婦の滞在しているゴテージ風のホテルで休息し、昼飯後、偵察を兼ねてホテルから車で15分のキサップ(Kisap)向かう。ここはゴルフ場に沿った小道がポイントだそうだ。小川の河原に10頭ほどのミカドアゲハ、アオスジアゲハ、マダラタイマイが吸水し、ネロ(ベニシロチョウ)も数頭舞っており、早速撮影に入る。ホソバジャコウアゲハ、ウラナミシジミ類、ウラナミジャノメ類やキチョウ類も多く見られたが、夕方になったので明日以降の蝶との出会いを楽しみにホテルにもどった。。

 私たちの泊まるベイビューホテルは15階建ての近代的な造りで、島内の中心地であるクワ・タウン(Kuah)にある。近くに商店や、各種のレストランも多くあり便利で、室内も広く清潔であった。

 ランカウイ島はマレー半島の西側でタイとの国境近くにあり、面積は38㎢(淡路島と同じ)で人口は約9万5000人、平均気温は28度前後で、熱帯雨林(ジャングル)が広がっている。近年は海岸のリゾート開発も進み、欧米からの観光客も多いとのことだ。

 ランカウイ島の蝶については、加藤勝利氏が2005年に「ランカウイの蝶」を個人出版され、408種を記録されている。これ以外に69種が知られており、合わせると487種になる。その後記録されたものもあり、現在では500種を超えているのではないかと言われている。また島内の蝶については、村岡、井澤氏が2011年に出された「ランカウイ島の蝶観察ガイド」があり、観察地などが紹介されている。私たちは滞在した期間(2月16日~22日)、ホテルから近いキサップに午前中行き、午後はケダ(Keda)で撮影と観察・採集をおこなった。

 今回の採集行の最大の目的はキララシジミに出会うことであった。ランカウイ島には7種のキララシジミ属(Porita)が知られている。最初の出会いは観察2日目、キサップでエリキノイデスの雄がジャングルから山道に舞を降りて目の前の葉に止まった。翅は閉じたままで輝く瑠璃色の紋は見えず、仕方なく翅裏を写ししばらく待ったがこらえきれずネットインしてしまった。その後はなかなか出会うことがなかった。本種は通年であれば11月から1月中頃までが発生時期で2月には少なくなるとのことで、あきらめかけていたが、5日目(2月21日)の午前中に幸運にも数頭の雄が現れた。葉上で開翅し、朝日に輝く美しい瑠璃色の紋を存分に見せてくれた。

 今回の採集行で私が標本にした個体は約110種、300頭であった。この他採集は出来なかったが撮影や目撃した蝶が約20種あり、7日間で島内の蝶の4分の1が見られたことになる。その主な種は次のとおりである。

 アゲハチョウ科ではマダラタイマイ、アオスジアゲハ、ミカドアゲハ、オナガタイマイが川辺に吸水に集まり、オビグジャクアゲハ、シロオビアゲハ、オオモンキアゲハ、ナガサキアゲハ、オビモンアゲハが花にあっまっていた。また高い樹上を悠然と飛ぶヘレナキシタアゲハを数頭遠望できた。

 マダラチョウ科のうちルリマダラ類は島内に15種が知られているが、ツマムラサキ、シロオビ、ホソバカラス、アルゲ、ヒメ、シロモンの6種を採集した。その他、フタホシオオコマダラ、ウスキイロアサギマダラ、リュウキュウムラサキ、スジグロカバマダラが見られた。

 タテハチョウ科では、ケダでT氏が仕掛けたトラップにイチモンジイナズマが多く集まり、オオベニボシイナズマ、アオヘリイナズマ、オビモンヒメフタオも見られ、マルバネイシガケ、キレバイシガケが無数に集まっていた。草原ではアオタテハモドキが多く、クロタテハモドキ、ハイイロタテハモドキ、ジャノメタテハモドキ、クラリッサビロードタテハ、ソトグロカバタテハ、エグリゴマダラ、キンミスジ、ファスキアータキスジ、ツマジロイチモンジ、リュウキュウミスジ、トラフタテハ、イワサキコノハ、ウラベニヒョウモン、ネッタイヒョウモンが見られた。

 シロチョウ科では、炎天下をツマベニチョウが飛び交い、草原から林縁には、カワカミシロチョウ、ウスキシロチョウ、キシタウスキシロチョウ、ヒメトガリシロチョウ、メスシロキチョウ、クロテンシロチョウ、キチョウ類が多く見られ、デリアスではベニモンシロチョウを1頭だけ採集できた。

 シジミチョウ科は前記のキララシジミの他に目立ったのはハゴロモシジミで、ケダの林(ジャングル)の中を悠然とまさに羽衣が舞うように飛んでいた。林の中にはベニモンミツオシジミやロヒタキマダラルリツバメ、ウラギンシジミが、湿地にはピエロシジミやウラボシシジミが群がっていた。

 シジミタテハは数は少ないが、コモンシジミタテハ、エビイロヒョットコが見られた。セセリチョウ科ではクリイロセセリ、シロシタセセリ、キノカワセセリなどが見られた。

 中日の6月19日は朝方から雨だったので,島内を観光した。マングローブが茂る川の船旅や鳥園、マハティール前首相の記念館を回った後、ランカウイケーブルカーの頂上駅にある展望台でオナガツバメシジミを写真に撮ることができた。また、北東部のタンジュアール(Tanjung Rhu)の海岸でチャイロドクチョウを見つけた。中南米原産の蝶が何故マレーシアにいるのだろうか。2004年のスマトラ沖地震の被害でタイのプーゲット島の蝶園から逃げ出したのが、海岸のトケイソウを食草にして棲みついたのではないかと言われている。

 今回の旅行では採集と写真撮影の双方を狙ったが、両立はかなかな難しかった。しかし好天に恵まれ、またT氏の親切で心にこもった案内もあり楽しい採集行となった。機会があれば再度訪れ、採集でなく写真撮影を存分に楽しみたいと思っている。

川原での吸水

朝日に輝くキララシジミ

開翅したキララシジミ

オナガタイマイ

キマダラルリツバメの1種

バナナトラップに来たイチモンジイナズマの雌

湿地に集まるイシガケチョウ

チャイロドクチョウ

今回採集した標本

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