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巨大昆虫標本箱とモンシロチョウの雌雄型

2010.3.3 更新

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 平塚市の全農営農・技術センター農薬研究室のある建物の玄関に大きな昆虫標本箱が飾られている。高さ170㎝横130㎝で普通の標本箱10箱分あり、中にはモンシロチョウなどの蝶標本で「クミアイのうやく」の文字と系統マークが描かれている。

 私が大学を出て初めて赴任したのが、平塚市の全購連農薬研究所であった。そこは神奈川農試原種分場跡地で4万4千平方米(2万2千坪)もある荒地であった。敷地内の小さな木造の建物に1人で寝泊まりし、農地の整備をさせられた。2年後に農業技術センターが同地に発足し、本館も出来あがり、圃場も整備され、本格的仕事が開始された。本館は4階建で、当時平塚市で一番大きなコンクリートの建物といわれていた。

 農業生産団体の組織が、大規模な研究試験機関を持つことは異例のことであるが、農協で取扱う資材について、みずからの手で検査し、品質を確認し、納得した上で農家の手に渡そうという先進的な考えのもと設立されたもので、4億6千万円(現在に換算すると百億円以上)の巨費が投じられた。

 殺虫剤研究室の仕事は、当時パラチオン抵抗性ニカメイチュウ、マラソン抵抗性ツマグロヨコバイの出現などで忙しかったが、忙中閑ありで虫好きの仲間が集まり、巨大な標本箱を作って、飾ろうということになった。

 その年の初夏、圃場にモンシロチョウが大発生、研究員総出で採集し展翅した。展翅板が足らなくなるので、90度に設定した乾燥機に1時間いれて次から次へと乾燥させ1000頭以上の標本を作った。当時の志賀昆虫社の針は無頭針しかなく、終わったら指先が腫上り仕事にならない有様であった。

 モンシロチョウ以外の蝶は、長野県美ケ原まで出張で採集に行かせてもらい、これらを合わせ約1300頭の標本を用い、冒頭に書いたの絵文字とマークを完成させた。まさに良き時代であった。

 作成したモンシロチョウ標本の中に、左右の紋様が少し違う雌雄型らしい個体が見つかった。雌雄型といっても左右対称に現れたものでなく、雌雄の形質がモザイク状に出たものである。モンシロチョウの雌雄は紫外線によつて区別できることが知られており、暗室で紫外線を照射し撮影した。

 右翅は前後翅とも雄の形質であるが、左翅は前翅では雌雄の形質が入り乱れており、後翅でが中室上部から第6脈付近で形質が分かれ上部が雄、下部雌の形質となっている。一般に雌雄型の出現の確立はどのくらいかわからないが、1000頭くらい採れば1頭位見つかるのかも知れない。

 全農営農・技術センターの建物は、築50年で耐震性の問題もあり、近く取り壊される予定と聞いている。あの巨大昆虫標本箱の行く末は決っていないそうである。

巨大昆虫標本箱
約1300頭の蝶の標本が入っている。

モンシロチョウの雄雌型(紫外線照射で撮影)
採集日 1965年6月25日
採集場所 平塚市東八幡全農圃場

全農営農・技術センター本館(2010年3月9日撮影)

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