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50年前の1位論文

2010.3.3 更新

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 大学を卒業して、就職先に行くまで1月間、ヒマな時期があった。そんな時に毎日新聞宇都宮支局が、デパートと小売店の共存共栄についての懸賞論文の募集をしていた。虫取りしか知らない22歳の青年が、専門知識も無いのに怖いもの知らずで一気に書き上げ応募したら、なんと1位になってしまい賞金5千円を頂いた。大卒の初任給が1万円くらいの時代で、5千円は今の10万円の価値があり、机とオーバーコートを買った記憶がある。今読み返してみると未熟な文章と内容であるが、青春の記念として再録する。

宇都宮のデパートと小売店の共存共栄はいかにあるべきか

 デパートと小売店の共存共栄は、戦後全国の中小都市にデパートが進出してきたことにより取り上げられ、地方商業発展のためにも是非考えなければならない重要な問題である。しかし、このデパートと小売店の共存共栄とは一体なにを意味しているのであろうか。「共存共栄」とは共に存在し共に栄えるということである。しかしながら現在激しい競争をよぎなくなくされている商業界の中で、最も利害の反するデパートと小売店の間に、はたして共存共栄はありうるのだろうか、また出来たとすればいかなる場合であろうか。この問題を宇都宮のデパートと小売店の関係をもとに述べてみよう。

[宇都宮のデパートと小売店との関係]

 戦後しばらくの間、宇都宮のデパートは「上野百貨店」が唯一のものとして繁華街の中心地である二荒神社の下に存していた。この間、上野百貨店は他の小売店に影響することなく、かえって宇都宮に地方(在)の客寄せに場所の役割をはたしてきてたと思う。しかしこの均衡も山崎デパート、宇都宮駅デパートの進出に加え、昨年末の東武デパートの完成や、現在行われている上野百貨店増築とこの他に1,2のデパートの設置が伝えられ、この問題が浮上してきたのである。

 これらデパートの進出はどの位小売店に影響を与えているのであろうか。他の人口20万の都市と比較してみると、現在の4つのデパートは決して多いとは思えず、いずれも小規模なものばかりであり、小売店に多大な影響を与えているとは思えない。影響があるとすれば客の流れが変わり、いわゆる繁華街の移動が行われることではないか。例えば東武デパートの完成によって、客足が繁華街の中心である馬場町から上町に伸びてきていることから見ても明らかである。また、東北線の電化に伴い高級品は東京のデパートに買物に行く客も少なくない。これを止める事こそ共存共栄の道ではなかろうか。

[宇都宮におけるデパートの役割]

 デパートの進出は一般に小売店に一方的にマイナスなるわけでなく、現在程度のデパートであれば多くのプラスの面も少なくない。一概にデパートの設置をおさえることによって小売店に繁栄をはかるとするのは、かえって客を分散させることとなる。(以下略)

[宇都宮におけるデパートと小売店の共存共栄の道]

(前段略)
1、デパートの総合化と小売店の専門店化
 デパートは体面上あらゆる商品を取り扱わなければならない。現在のような小規模なデパートでは店内が細分化され,個々の商品別に見ると小売店以下の規模になってしまう。小売店はこの間を利用し思い切った専門店に転ずるべきである。宇都宮における小売店を見ると、例えば衣料品店の場合あらゆる衣料品を扱うため焦点がなくなり、衣料品の百貨店の様相を呈している。これでは、大資本をバックにしているデパートに対抗できない。思い切って専門店化し商品を多く揃え、店員の商品知識を豊富にし、客に対しての精神的なサービスに徹するべきである。

2、客の絶対数の増加への努力
 デパートの進出で小売店との競争が激しくなれば、客の絶対数の増加がないかぎり、共存共栄は成立しない。宇都宮は大工場が少なく、近郊の農村を相手として成立っている消費都市である。この地方の農村の客を集める事が重要なことであろう。地方の客を集めるには、交通機関の強化と娯楽設備の充実が大切である。交通機関についてみると、宇都宮に集まる多くの人はバスによって運ばれてくる。日曜日などはどの線も満員になり、満足に乗れないとか、終バスの時間が早いため落着いていられないという声を耳にする。娯楽設備の点では宇都宮に来ても映画を見てパチンコして街を歩くくらいで、他に客寄せのの設備は何も無いのが現状である。これでは地方の客に魅力がない。この点市当局と交渉し健全娯楽の殿堂というべきものを作らなくてはないのではないか。

3、買い物をしやすい環境を作る
 今は昔と異なり多くの客を集めるのには現金買いだけでは困難である。職場単位の生協や消費組合が伸びている今日、小売店はチケットや月賦制の強化に努力すべきである。また、店員教育や店内美装を考え、客に対し心からのサービスをするようにしなければならない。

[まとめ]
 宇都宮のデパートと小売店の共存共栄は、一般小売店はデパートを客寄せの場所として利用し、デパートの総合化に対して、専門店化をおこなうことこそ共存共栄の道である。

1位論文を掲載した毎日新聞栃木版
(1960年4月12日付け)

住所が宇都宮市になっているが
4月から就職して神奈川県に移住していた

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